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今月の『これって問題じゃないですか?』

インクルーシブ教育のススメ
                        〜住民が互いに助け合う社会の構築〜


【私の見方】

近年、障害児が健常児から隔てられることなく、両者が同じ普通学級で学ぶ制度への関心と期待が高まっています。それがインクルーシブ教育です。インクルーシブ教育は、94年のユネスコの「サラマンカ宣言」で提唱され、国際的に認知されました。また、インクルーシブ教育を原則に定めた「障害者の権利条約」が昨年12月、国連総会で全会一致で採択されました。

■制度転換に追いつけない教育現場

 こうした流れを受け、文部科学省も障害児教育の方針を大きく転換しました。4月から改正学校教育法を施行し、障害児を集めて専門教育をするという考えを改め、障害のない子どもとできるだけ一緒に授業を受けさせるという姿勢になりました。しかしながら、施設や人員面などのハードルがあり、現実にはこれまでの分離教育から脱却するまでには至っていません。

本県でも、小中学校の通常学級に在籍する障害のある児童・生徒に非常勤職員を配置する「いわて特別支援教育かがやきプラン推進事業」を実施してきましたが、まだまだ不十分な状況です。今年5月現在、県内の小中学校のうち、通常学級に障害児が在籍している学校は延べ269校、学級数にして405学級あるのに対し、同事業による非常勤職員の配置は35校・35人、市町村による支援員等の配置は125校・132人にとどまっています。

また、花巻市内の小学校を調査したところ、特別支援学級が設置されていない小規模校では、障害児が「かがやきプラン」を活用した非常勤教員の補助を受けながら通常学級で学び、必要に応じて個別指導も受けるなど、きめ細かな教育を受けていました。一方で、特別支援学級が充実している大規模校では、通常学級に就学した障害児が安易に特別支援学級に追いやられている例が見られました。

今後は、特別支援学級のある学校では、保護者が望む場合は子どもを通常学級に在籍させながら、必要な支援を特別支援学級で行なうなど、特別支援学級の柔軟な運用が求められます。

■支援員拡充と教員の意識改革を

1人ひとりの教育上のニーズを満たしていく支援は欠かせません。しかし、それを理由に、障害児が地域の普通学級で障害のない子どもと共に生きる関係が断ち切られてはなりません。地域の普通学校で必要な支援を受け、1人ひとりのニーズが満たされながら、多くの障害のない子どもとの普通の関係を築くことができてこそ、障害児も社会の一員として生きる力を獲得していけるのです。

 国は今年度から小中学校で学ぶ障害児らを補助する支援員の人件費を1校当たり84万円出すことを決め、各市町村に交付税措置しました。今後は、この国の交付税措置をベースに、小中学校のすべてに特別支援教育支援員を配置することが課題となってきます。懸念されるのは、交付税は使途が限定されない一般財源なので、例えば道路建設費に回ってしまう恐れがある点です。

最大の課題は、教員の意識改革です。保護者の声を聞いていても、教員の意識の低さが目立ちました。今後は、インクルーシブ教育の理念をすべての教員にしっかりと認識させることが必要です。そのために、採用時から、インクルーシブ教育にかかるプログラムを盛り込んで研修を進めるとともに、特別支援学校の教員が地域の学校に出向いて、具体的な指導・助言を行なうなどの取組みを強化し、教員の意識改革と資質向上を図る必要があります。

■草の根の地域を担う人材育成

 インクルーシブ教育は、障害児のためだけのものではありません。人間は誰も自分でできることだけで生きているわけではありません。自分の手でできないことや苦手なことを他者の手で補いながら生きています。少子高齢化の進展に伴って、行政だけでは社会保障を正常に維持することが困難になっている時だからこそ、人々が互いに助け合い、役割を分かち合う社会を築き上げなくてはなりません。

そうした社会を担う人材をつくるたには、子どもたちは学校現場でも同じような体験を持つことが大切であり、インクルーシブ教育がその体験の場を与えてくれます。達増知事も「草の根の地域」を支援し、守ることが大事だと言っていますが、助け合いや支えあいの上に成り立つ「草の根の地域」を支える人材を育てるのがインクルーシブ教育なのです。教員を増やすことや学校施設の改修など、インクルーシブ教育には財政負担が伴いますが、将来の地域づくりを担うかけがいのない人材を育成するための意義ある投資と考えるべきです。

(辞書)特別支援学校/改正学校教育法の施行に伴い、盲、ろう、養護学校の法令上の位置付けが「特別支援学校」に一本化された。





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